理学療法士がすぐに「鍛えましょう」と言わない理由

「どこの筋肉を鍛えればいいですか?」と聞かれるたびに思うこと


体にまつわる仕事をしていると、体の不調に関しての質問をいただくことがよくあります。
中でも返答に困ってしまうのは、まだ体を診たことがない方から

「どこの筋肉を鍛えればいいですか?」

と聞かれた時。
肩や膝の痛みや、痩せたいという話題から、そういった質問に発展することは少なくありません。

お相手の方にとって良くなりたい気持ちが伝わってきます。

だからこそ、私は答えに少し慎重になります。

すぐにそれらしい返答ができたら楽なのですが、
正直なところ、それができないことが多いのです。


なぜかというと、

体の使い方も
生活環境も
毎日の過ごし方も

人それぞれ違うからです。

お話をよく聞いて、
実際に動きを見せていただくと、

「同じ部位の悩み」でも
原因がまったく違うことがよくあります。

状況にもよっては、
適当なアドバイスがかえって体を悪くしてしまうこともあるため
答えを濁すこともあります。


例えば環境のことで言えば

子育て中のお母さんと
外で作業をすることが多い工事現場の方と
長時間座って仕事をする会社員の方。

悩み自体は一見同じに見えても
体にかかる負担も体の使い方も全然違ってきます。

だから対策も変わってきます。


関節痛に関して言えば、痛みが出るのがどんな場面なのかを知る必要があります。

・いつから痛みが出ているのか
・どんな動きで痛むのか
・常に痛いのか、特定の瞬間だけなのか

また、動作はさらに細かく分析する必要があるかもしれません。


「痩せたい」といったお悩みも、痩せた先にどんな生活を想像しているのかを共有する必要があります。

・結婚式に参列する服を綺麗に着れるようにしたい。
・健康診断の数値を改善したい。
・見た目をスッキリさせたい。

など、具体的な目標や期限が違えば、選ぶ方法も変わります。


そこで聞かれるのが
「筋力がないからだと思うんです。どうしたら筋肉が増えますか?」
と言ったこと。

・・・いやいや、まだ何も診ていないのに
筋肉が問題だと決めるには早過ぎます。

痛みをなくすため、痩せるためには
「筋力をつければ解決する」
と思われがちですが、
筋力は、体を構成する要素の一つに過ぎません

理学療法士は、施術に入る前に「評価」を行います。

具体的には、
悩みと目標を伺い、スタートとゴールを確認し
止まったり動いたりして体の様々な側面を診て分析した上で
最善の道筋を選びます。

その時点で、問題点が
筋肉にあるのか、
体の使い方にあるのか、
生活環境や年齢なのか
などを整理して、施術に当たります。

仮に筋肉に問題があったとしても
どの部位の筋肉なのか
筋肉の柔軟性なのか
動かし方なのか
etc…

診ていくべき側面がたくさんあります。


実際の場面では

体の使い方を少し変えただけで
その場で痛みが軽くなることもあります。

ストレッチをして姿勢がよくなることで
痩せて見えるようになることがあります。

筋肉量はすぐには増えないので、
その場ですぐ筋力が上がったとはいえません。

このようにいわゆる「筋トレ」をしなくても
問題が解決することがあるのです。


筋肉量が充分ある方でも
痛みが生じたり、体重を落としたいと思う方もいます。

また、実際の問題点が、患部とはかけ離れているということもよくあることです。
脚が痛くても、上半身に問題がある場合があります。
痩せたいという中身が、実は体重を減らせばいいということではないこともあります。

こういったことからも、理学療法士は施術に入るまでの問診を大切にしていますし、筋肉をただ「増やせばいい=鍛える」という発想に安易にはならないのです。

もちろん筋力は大切です。
でもそれは、体をつくるたくさんの要素のうちの一つなのです。


ただ、一度悩みが解決したように見えても
それまでの体の使い方や生活習慣が元に戻れば
また症状がぶり返すこともあります。

これは珍しいことではありません。

こう言ったことから、その方に合った再発防止のアドバイスをすることも、理学療法士は大切にしています。
ただ単に、「筋トレをしましょうね」と簡単に済ますわけにはいかないのです。


私が伝えたいのは、

不調の原因は
ひとつではないかもしれないということ。

「筋力がないからダメ」
「体が硬いからダメ」

と、一部の側面だけで自分の可能性を決めつけないでほしい、ということです。

自分の体を少し知るだけで、
生活がぐっと楽になることがあります。

もう一生自分はこのままかな、と諦めていても
ちょっとした工夫で体調が良くなることがあります。

もし今どこかに不調がある方は、

「筋肉を鍛える」という一側面だけでなく
「どう使っているか」
「他の部分はうまく機能しているかな」
ということにも目を向けてみてください。

そこにヒントが隠れていることが多いのです。


もし自分の体の状態を一度整理してみたい方は、専門家に相談してみるのも一つの方法かもしれませんね。

体にまつわるトピックスは

こちらのnoteブログでもご覧いただけます。

お時間があればぜひそちらもお読みください。












keisuke wadaComment